山本 美芽先生によるインタビュー

谷口 貴彦コーチ ~山本 美芽先生によるインタビュー
「無理、できないと繰り返していた保科さん。今とは真逆でした」

保科さんとは2005年からセッションを始めていますから、
もう7年のおつきあいになりますね。
ひとことでいうと、昔と今では、保科さんが見渡せる世界は、
大きく変わっています。

 以前の保科さんが見ている世界は、20メートルから30メートルぐらい。
普通の人だったら、そんなものでしょう。
今は、200キロぐらい先を見ている。
日本全国が身近に感じているでしょう。
それは物理的に、仕事であちこち訪れるようになったというだけでなく、
心で見る、想像する範囲が変わったのだと思います。
話す話題も、「生徒さんが」「家族が」という身の回りのことから、
「音楽界が」といった、スケールの大きなことになってきていますね。

 今の保科さんなら、何かに取り組むとき「無理かもしれないけれど、とりあえず、やってみます」
と考えるでしょう。
でも、セッションを始めたころの保科さんは、「たぶん無理だと思う」という言葉がよく出ていて、
今とまったく逆でした。
どうせできない、無理だと思う、という否定的な考えが、ものすごく強かったんです。
誰でも「やってみたい」「無理」という気持ちのあいだで、もシーソーのように揺れ動いています。
保科さんは、はじめ「無理」のほうに傾いていたのが、
セッションを受けることで、「やってみる」に今は大きく傾く状態に変わりましたね。

 よく覚えているのは、保科さんが自宅近くで、お友達のお母さんを対象に、
初めてランチセミナーを開くときに、「どうしよう、どうしよう」と、ものすごく不安がっていたこと。
一生懸命開催したけれど、ぜんぜん人が来なくてがっかりしたこともあった。
いまの保科さんは、地方に呼ばれてセミナー講師をつとめるまでになりましたが、
最初はそんなふうな場所からスタートしたんです。
成果をあげるまでには、たくさんのチャレンジがありました。
失敗しては、本当によく、泣いていましたね。

 でも、セミナーを開いて人が集まらなかったときに、その経験が無駄だったのかというと、
そんなことはない。
プログラムを作ったり、お店を予約する経験は積めたし、将来「こんなこともあった」と話すネタにもなる。
セッションでは、そうやって見方を変えることをしてきました。

 誰でも、うまくいかないこと、欠点、できていないことに目がいきがちです。
でも、僕らコーチは、1パーセントでもいいから、できていることに光を当てる訓練を受けています。
コップに3分の1の水が入っていたら、
「3分の1しかない」ではなく、「3分の1もある」と考えるわけです。

 家族を持ってお母さんをしていると、自分のことは最後になってしまいがちです。
保科さんもそうでした。
自分を優先してはいけないと思い込んでいる、自分を最後にするための理由を一生懸命考えていた。
でも、本当に自分が満たされてこそ、他人も大事にしてあげることができます。
「自分を優先してはいけない理由」なんて、いくらでも取り除けるんです。

 たとえば、家族に「私をほめて」とお願いするのも、自分を優先する行動のひとつ。
保科さんとも、「じゃあ、今週は、ご主人に自分をほめてもらうように、頼んでみることにしよう」と
計画をたてたこともありましたね。
「頼む」という行動は自分の変化ですから、それで他人を変えられるかもしれない。

 誰にとっても、ほめられる、認められることは、エネルギーになる。
それが足りなくなると、ガス欠になるんです。
もちろん、セッションの中で僕が「これは、やれたじゃない」と、ほめて元気を注入することもある。
だけど、ご主人とか家族とか、身近な人にほめてもらうのが、一番力がでますからね。
セッションでは、そんなふうに「これができたね」と光を当てることもするし、
将来どんな未来にしたいのか描いたりしています。

 コーチとしてやってきて思うのは、コーチングがすごいわけではなくて、
すごいのは本人の潜在能力だということ。
自分ひとりで、本来の目標を見失わずに進んでいくのは非常に困難ですが、
プロの第三者の力を借りると、ずっと容易になります。

 コーチングは、目標達成、成功する、うまくいくための仕組みなので、人に教えることも可能なんです。
自分自身が大きく変わった経験をしている、そんな保科さんだからこそ、
「他の人を輝かせるお手伝いがしたい」という思いが強いのでしょうね。

(取材・文 山本美芽/音楽ライター 2012年9月)